先日、森村泰昌展に行ってきました。
作品は肖像写真なのですが、森村さんご本人が変装して、ゴッホやレオナルド・ダ・
ヴィンチ、デューラーなどの名画の肖像画作品になりきって写真を撮ったものです。
それが見事な変装ぶりで、ただ同じ格好をするだけではなく、輪郭も鼻の形も、特殊
メークでそっくりにし、さらに絵にみえるように顔や服に筆で描いたような凸凹(マ
チエール)がメーキャップで施してあります。複数の人物が描かれている絵画の場合
は、一人ひとりすべてが森村さんなのです。
もとの名画に、人物の背景に椅子などの小道具があり、油彩の粗いタッチで描かれて
いたならば、その椅子までも本物そっくりにメーキャップ?をして撮影してありま
す。
「写真のような絵」はよくありますが、「どうみても絵にしか見えない写真」。こう
いう発想は思いついた人の一人勝ちとも言えますが、あまりにも徹底されているので
簡単に真似できるようなものではありません。この鼻をつけるのに、いったいどう
やったんだろう。この服のレースは?この美女の玉のようなお肌は?・・・
何のためにそこまで手の込んだことをするのか?なんて考えてはいけません。芸術で
すから。そういう作品なのです。
昔美術の教科書で見た絵が、この人の写真で再現されている面白さ。ただのモノマネ
ではすまされない迫力と、徹底した作者の気迫がせまってきて、もとの絵を知らなく
てもトリックアートを楽しむ感覚で、あっという間に展覧会の出口にきてしまいまし
た。それでも3時間は軽く経っています。旅行などに行く余裕はなかったとしても、
美術館なら現実から離れて充実した1日を過ごすことができますね。
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