今年還暦を迎える。
私の母親は現在92歳。
それなりに足腰は悪いがしっかり92歳の人生を生きている。
咀嚼も嚥下もスムーズとまではいかないが、食べるものにはこだわりがある。
旅行もなかなか難しく、外食もいろいろなハードルがあり、もっぱら階段のないタクシーで行けるところでわがままが通る店でないと難しい。
唯一簡単に行けるのが、近所のにしむら珈琲店だ。
神戸では老舗であり、生まれも育ちも神戸で現在も御影在住の私にとって、駐車場が広く、おいしいコーヒーとケーキやパンのみならず、昔から変わらない喫茶メニューが神戸っ子には人気である。
平日は初老の方々や主婦の皆様の社交の場、日曜は家族連れが朝からブランチにやってくる。
いつも満員。
ホールスタッフも制服できちんとしたマナーの接客をしてくれて、食事の際にはちゃんとこぼした時の汚れ防止のひざ掛けタオルをくれる。
私が子供の頃は、パンもケーキもフロインドリーブ、ハム類はデリカテッセンだったと記憶している。
中山手にレンガ造りの本店があり、北野坂の上には、会員制のにしむらがあり、会員の方に同伴して感動したことがある。
そしてJR三宮のすぐ北にも店はあり、どの店も歴史を感じさせる作りで、絨毯も重厚、テーブルや椅子もレトロな木造りのもので、とても重い。
そうそうコーヒーカップも昔からかわらず分厚い重いもので、クリームはひとりずつ銀のクリームサーバーにたっぷりいれてあり、分厚いソーサーの横にそえられる。
50年以上変わらない。
いつ行っても変わらないものが少ない今、行くとホッとする気分になる。
今はケーキもパンもにしむら珈琲の傘下のセセシオンが作っているが、昔のフロインドリーブのパンとケーキの雰囲気は変えず、ドイツ系でよりおいしく作られている。
年齢層は様々だが昔からにしむら珈琲店を愛してきた人たちが足しげく通う姿は少なくない。
朝のモーニングのハムエッグセットは、一人用のフライパンに定番のハムエッグとトーストとサラダで、家庭のおしゃれな朝食の雰囲気で、なんとなく優雅な感じがする。
ほかのランチメニューなども昔から食器も盛り付けもかわらずだ。
昨日久しぶりに平日お昼前に三ノ宮のにしむらにふらっと行った。
初老の男性が新聞を読みながら遅い朝食を楽しみ、初老の女性も一人で、家が近所なのだろうか、毎朝来るようなことばをかわしている人もいた。
ビジネスマンやまだ若い人たちは、飲み物を味わうのもそこそこに話し込んでいるのに比べて、高齢の方々は時間をゆったり有意義に過ごしながら喫茶店という空間も楽しんでおられる。
ただびっくりしたのが、常連のような複数の女性が非常に高齢で、杖をついたり、ゆっくりしか歩けない。
食べるのもトイレ一つ行くのもかなり時間がかかりスタッフも気を配っている。
その人たちの服装が喫茶店に行く服ではないようなもので、皇室の公式行事に使うような帽子をかぶっている人もいる。
それがまた派手な色。
眼鏡もすごい色だったり、バックも派手。
着ていくところがなくなってきたから着ているのか、ちょっと認知にずれが出てきているのかそれは言及しないことにするが、違和感はかなりであった。
高齢者の全部がそうではないが、私の暮らしているところや芦屋などに行くと、一人暮らしのセレブはどうもそんな傾向にあるように感じる。
逆にいい歳をして若者まがいの服装の人もいて(すいません、私はいつもスポーツウエアです)、膝の出たスカートやジャージ。
これもどうかと思う。
「人の振り見て我が振り直せ」。
これから長寿の時代、色の美しい希少動物があちこちに出没するのかもしれない。
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